プロ棋士に必要な糖分と認知症を引き起こす糖分の違い

将棋の藤井プロの大躍進が止まりません。プロ棋士の対局に関心を寄せる人も増え、加藤一二三プロのキャラクターに魅せられ、棋士の甘い物好きや、対局中の食事とおやつにまで注目が集まりました。「脳を使うには甘い物が必須」そのことがより鮮明に意識される現象ですね。

一方で、糖尿病患者さんの認知症発症リスクが指摘され、高血糖は認知症を誘発すると言われています。

「脳を使うには糖分が必要」と言われ、事実、頭脳を酷使するプロ棋士にとって甘い物は重要な役割を担っています。にもかかわらず、甘い物を摂ると認知症リスクが高まるという現実…誰もが感じるこの2つの矛盾を「なるほど!」に変えたのは、5月23日NHKで放送された「ためしてガッテン」でした。最近物忘れがひどくなったと感じている方、日頃から血糖値が高めの方、また職業柄頭脳を使い甘い物の取り方に不安があるという方の参考になる情報でしたので、備忘録として要点をまとめます。

 

 

1.糖分と脳の関係

いま現にある事実、それは

●糖分を摂り過ぎると物忘れがひどくなる

●しかし脳を使うには糖分が必要

という脳と糖分の関係です。

脳の働きを活発にするためには、糖を脳へと取り込むことが必要です。ではなぜ糖分を摂り過ぎると物忘れがひどくなったり認知症の発症リスクが高まるのでしょうか。

2.矛盾の原因はインスリンだった

食べ物から摂り入れた糖分を人間の身体の細胞に届けているのはインスリンです。インスリンは、身体に入ってきた糖分を細胞へと届け、細胞はそれをエネルギーとして消費しながら活動します。

糖とインスリンの関係は下記に示した順路をたどるため、血糖値が高い人の場合、インスリンが身体のほうで使われてしまい糖分を脳に届けるところまで手が回らない状態になっていきます。そのため、プロ棋士を参考に物忘れを改善しようと糖分を沢山摂ってしまうと、ただでさえ手が回らないところにますますインスリンが脳で働かなくなるという悪循環に陥ります。

暴飲暴食をする(糖分を日常的に過剰摂取する)

(※過剰な糖分により身体が危険信号を発して毛細血管もダメージを受ける)

すい臓からインスリンが分泌される

分泌されたインスリンは、身体のほうを優先させ糖を身体の細胞に運びエネルギーとして消費させるため、脳への処理が後回しになる。(※暴飲暴食や甘い物の過剰摂取が日常的であればインスリンは脳で働きにくくなる)

脳細胞に必要な糖が取り込まれず、物忘れや認知症発症リスクが高まる

 

糖が常に身体に溢れた状態になっていると、それを処理しようとインスリンは身体への糖の取り込みに必死になり、脳への取り込みがおろそかになってしまいます。そのため血糖値が高く最近物忘れがひどくなったという人が脳を働かせようと糖分を摂るのは逆効果になります。

一見矛盾ともとれる「プロ棋士と糖」「物忘れと糖」ですが、インスリンの働きを理解することで矛盾のない筋の通った論理が見えてきます。

3.やってみよう脳テスト

物忘れや認知症が気になる方は、まずは、自分の脳がどれくらい働いているかをチェックしてみましょう。

やり方は簡単!スマホなどを使って1分間のタイマーをセットします。そして時間内に動物の名前を言えるだけ言います。

 

1分間で14個以上言えない場合、脳の働きを改善する工夫をしましょう。若い人であれば20個以上言えたほうがいいかも知れませんね。ちなみに筆者は50代で特に買い物の物忘れが多くメモ魔と化して10年以上が経っています。そのためこのテストはとても不安でしたが、23個という結果でひとまずホッとしているところです。

※このテストで同じ動物名を複数回言うなど、一度言ったものが把握できていない場合も、脳の働きとして要注意です。一時的に物事を覚えておく「作業記憶」が衰えている可能性があります。作業記憶が衰えると、火の消し忘れ、鍵の掛け忘れなどの物忘れが多くなります。

4.血糖値測定は食事の2時間後に

現在は血糖値を測定する器具が薬局などでも入手できるようになっています。手軽に血糖値を測りたいという方は検討してみるのも一つの方法ですね。測定は、食事をしてから2時間後に行います。140g/dL以上の場合、インスリンの分泌が正しく機能していない可能性があります。

5.なぜ運動が推奨されるのか

糖尿病の患者さんに運動が推奨される理由の1つには、インスリンの働きを高める目的があります。運動をすることでインスリンが活発に働くようになり、その結果、インスリンが脳にも届きやすく認知症リスクを軽減することにも繋がるのですね。

そのため、血糖値が気になる人への対策としても、①食事の改善で血糖値を下げる、②運動でインスリンの働きを高める、この2つを並行して行うことが大切になってきます。

6.インスリンが脳に働きやすい環境を作ろう

インスリンが働きやすい環境を作るには、前述したように食事と運動が大切ですが、具体的にはどうすればいいのでしょうか。参考例の紹介がありました。

①週2~3回の有酸素運動。

②ごはんを1回の食事で茶碗半分(100g)にし、最初に野菜を食べる。

 

※有酸素運動は、ウォーキングやジョギングなどが一般的ですが、ウォーキングの場合最初の30分はあまりエネルギーが消費されないため効果が薄いと言われています。つまりウォーキングで効果を出すためには30分を超えて歩かなければなりません。習慣にするにはちょっと長いですよね。そのため、その30分を時短して効率良く健康維持するための運動法として、ウォーキングを始める直前に「短距離ダッシュ」「階段の昇り降り」「腕立て伏せ」など、どれでもいいのでちょっとした筋トレを実施し歩き出せばすぐに汗ばむ体制を整えておく、又は、ゆっくり歩きと早歩きを数分ごと交互に繰り返すウォーキング法(インターバル速歩)が注目されています。

※②のごはんを半分にする食事法は、物忘れがひどくなった方が改善した事例として番組紹介していましたが、高血糖の方、糖尿病の方で医師の栄養指導を受けている場合には、その栄養指導を守ってください。糖分は不足しても問題があるため、医療機関で血糖コントロールをしている場合にはその指導を守る必要があります。

 

さいごに

インスリンには、脳の海馬の中の「歯状回」という部分の神経細胞の新生を促す力があることがわかってきたそうです。歯状回は記憶をつかさどる部分です。

プロ棋士の皆さんはじっと座っている割に細身の方が多いですね。現在棋士の食事やおやつが注目されているものの、対局中は集中して脳を使い、頻繁に食べ物を口にする様子はありません。おそらく対局以外の日常でも、消化と消費のバランスが取れているものと推察します。日頃のインスリンの働きが正常であれば、いざ必要となった時に摂取した糖分が見事に脳に吸収されあのような名局が生まれるのではないでしょうか。

漠然と疑問に思っていた糖と脳との関係でしたが、今回の放送で腑に落ちる形で説明されました。ガッテン☆ガッテン☆の45分でした。